8月4日名古屋市庁舎を表敬訪問した、ソフトボールの後藤希友(みう)選手の金メダルを河村たかし市長が噛んだことに対し、非難の声があがり、市長の謝罪声明後も、非難の声は、おさまりそうもない。
ここでは何があったのか、実際の出来事の底流にある論理みたいなものを確認したい。
ただし河村市長を弁護するつもりは全くない。この金メダル噛み事件、知れば知るほど、許しがたいものと思わずにはいられないし、そもそも大村・愛知県知事へのリコール運動時から、河村たかしのような、言論と表現の自由を弾圧する恥知らずで愚劣なファシスト政治家は辞めてしまえばいいと思っていたし、いまもその判断は変わりはない。だいたい河村市長は、リコール好きなようだから、今度は、自分がリコールされればいいのだ。
と、そう断った上で、自分なりに腑に落ちないところを整理してみたい。
そもそも自分の金メダルを他人にかけるというのは、どういうことだろう。
私自身あるいは多くの人は、金メダルは実際に見たことはないし、ましてや触ったこともない。そのため大きさやメダルのデザインを自分の目でたしかめ、もし許されるなら、実際に手で触れてみて、その感触とか重さなども確かめることができればと思う。
おそらくこれは誰の思いも同じだろう。ただし、では首にかけてもいいですよと言われても、さすがにそれは断る。私がとった金メダルではないし、該当する金メダルの分野とも無関係で(私はソフトボール選手ではない)、ましてや金メダルあるいはメダルそのものとも縁がないので、首にかけることは断る。
では、選手の側は、なぜ自分がとったメダルを、自分ではない人の首にかけるのだろう。
すぐに思い浮かぶのは、コーチの首にメダルをかけるようなこと。これは、コーチをはじめとする、世話になった人たちと喜びを分かち合いたいということ、あるいはそれ以上に感謝の気持ちを伝えたいということだろう。
この金メダルは、自分一人の力でとったのではなく、コーチの指導のおかげであって、コーチもこのメダルをかける資格はあるというような意味で。そうした資格は、たとえば選手を応援してきた家族にもあるかもしれない。先輩とか友人。応援団の面々。資金援助してくれた団体の、すくなくとも代表者や、ときには団体の面々も含まれるかもしれない。後藤選手の場合なら、トヨタ自動車の社長は、首に金メダルをかけてもらう資格があるのかもしれない。
したがって、もし私が選手からこのメダルを首にかけてみてはといわれても、私は、あくまでも一般人なのであって、たとえ心のなかで応援していたとしても、そのような感謝の気持ちには値しないし、おこがましいので、私としてはお断りする。まあ、当然のことだろう。
では河村市長はどうなのか。名古屋市から資金援助を受けていたのか。あるいは名古屋市が公的に支援を表明していたのか、それはわからないが、表敬訪問というかたちをとったとしたら、名古屋市にも感謝したいということになる。そのため河村市長が首に金メダルをかけてもおかしくはないことになる。名古屋市への感謝の気持ちであり、河村市長が名古屋市と名古屋市民の代表として、金メダルをかけさえてもらったということになる。
もちろん、そこで河村市長が、金メダルを噛むということは予想しなかったかもしれないが、河村市長にしてみれば、受け狙いか、お茶目なところを示したかったのか、金メダルを獲った選手がよくするように、金メダルを噛んだということだろう。
もちろん自分の金メダルならまだしも、他人の金メダルを噛むというのはやりすぎであることはまちがいない。
いつの頃からか、オリンピックで金メダルをとった選手が、昔、金貨が本物かどうか確かめるために噛んで判定した(純金の金貨は歯形がつくくらいやわらかい)ことの名残で、金メダルを噛むところをメディアに示すようになった。
金メダル=金貨には、噛む行為がセットになっている。またこれは金メダリストだけの特権で、銀メダルや銅メダルを獲った選手が、メダルを噛むことはない。またさらにいえば、現在の金メダルは純金製ではないので、思い切り噛んだりすると歯がかけるくらい堅いらしい(はっきり覚えていないが、銅に金メッキをしたのではなかったかと思う)。
また通常考えられるのは、メダルに接吻することである。日本人の習慣とは異なるものの、接吻行為は、全世界的に通用することかもしれないが、金メダリストは噛むほうを選ぶ。金貨と噛む行為との文化的歴史的結びつき、金メダリストだけに許される特権性のみならず、ここには金メダルに歯形を刻印するかたちをとる、強い所有権の主張が認められる。
河村市長も、自分も支援者の名古屋市民を代表して金メダルを首からかけた。そしてその所有を強固にするために、また受け狙いで、金メダルを噛んだということだろう。
これは、一連の行為の論理の確認であって、実際の行為の確認ではない。では実際には何が起こっていたのか。
President Onlineの「セクハラは突然やってくる――河村たかし市長の"金メダルかじり"のもつ本質的な問題点」 矢部 万紀子( 2021/08/07 15:15)という記事によると、河村市長から、
「せっかくだから、かけてちょうだい」と要求された後藤さんは、「あ、そうですね」と反応、市長に近づき、首にかけた。すると市長は、「あ、重てーにゃー、本当にこれ」とメダルを見ながら言い、取材陣の方を見て「重てゃーですよ」と言い、次に「なー」と言ってマスクを外し、「こうやって」とメダルを口に近づけ、そしてかんだ。報道陣に体を向けたままの、まさに一瞬の動作だった。
とある。ここで確認できるのは、後藤選手が、自分か、金メダルを市長の首にかけた、あるいはかけるようにしたのではなく、また表敬訪問の礼儀として、儀礼的に金メダルを市長にかけさせるのでもなく、ただ市長が「かけてちょうだい」と勝手に要求したということである。
この場合に、あなたの金メダルを首にかけてもいいですかと許可をとってはおらず、ただ、金メダルを、自分の首に「かけて欲しい」と、かけることもふくめ、要求しているだけである(コロナ禍で、こうしたことは許しがたいし、まるで、目下の者のように、かけさせるというのも問題がある)。
この記事はさらに、
河村市長が、自分からかけさせたのだ。当日の映像をあれこれ検索し、見つけた東海テレビの映像でわかった。「せっかくだから、かけてちょうだい」と市長が後藤さんに言っていた。だから後藤選手はメダルをかけた。そして市長はかみ、そのまま返していた。唖然としつつ思ったのは、「セクハラは、突然やってくる」ということだった。
とあるのだが、別に後藤選手の体のどこかに噛みついたわけではないので、これだけでセクハラにはあたらないと思うのだが、しかし、「セクハラ」と断定したい気持ちはわからないわけではない。というのも、Wikipediaの記述では、こうあるからだ。
後藤が「(金メダルを)持ちますか?」と問いかけると、「持たしてちょ。せっかくだから、かけてちょうだい」とリクエストした[139][140][141]。後藤から金メダルを首にかけてもらうと、手に取って「あぁ〜重てやぁ(重たい)な本当に、これ。重てやぁですよ。な。」と述べた直後、「こうやって…」と突然、自らのマスクを外して金メダルを噛んだ[140][141][142][143][144][145][146][147]。会場には河村の歯と金メダルが「カチッ」と当たる音が響いた[148][149]。メダル本体だけでなく、メダルリボンの一部も河村の口の中に入っていた[150][151]。噛んだ際には河村は首からメダルを外すと拭くことなくそのまま後藤に返し、後藤は頭を下げて両手でメダルを受け取った[149]。その後も後藤に対して「でかいな、でかいな」と繰り返したり、「旦那はいらないか」「恋愛禁止か」などの質問をしたりした[140][141]。【[]内の番号は、注の番号】
Wikipediaの記事がほんとうなら、「「でかいな、でかいな」と繰り返したり、「旦那はいらないか」「恋愛禁止か」などの質問をしたりした」というのは、いまでは絶対にしてはいけないセクハラ発言である。発言が女性に対して不快感を起こさせる可能性があるし、そもそも人間としても失礼であって、これは金メダリストでもある選手を、ただ見下げているだけである。
またWikipediaの記事がほんとうなら、後藤選手は、金メダルを持ちますかという聞いている。これはふつうのことであって、私も、金メダルの触感を確かめたいから、持ってみたい。しかし、その貴重な金メダルを首にかけようとは思わない。河村市長は、金メダルを手に取って、これを自分の首にかけてもいいかと許可を求めるのではなく、自分の首にかけろと、まるで下女に対するように、命じているのである。自分に奉仕させているのである。
【このやりとりがWikipediaの記述通りなら、「持ってみますか」という後藤選手の発言に対して、河村市長は、その上をいく、マウント行為をめざしたのだともいえる。たかが小娘が、金メダルを、持ってみますか?だと、市長である、この俺様に何を偉そうに言っているのだと一瞬、思ったにちがいない(もちろん、そう考えるのは河村市長だけで、後藤選手の発言に問題はない。むしろ彼女は、金メダリストとして、リコール不正の関係者で犯罪者に近い市長など見下すような高飛車な姿勢をとっても全然おかしくないと思うし、それは許されたはずだ)。
河村市長のことを、名古屋弁丸出しの庶民派のおじちゃんなどと甘く考えてはいけない。こういうクソジジイは、自分だけが正しいく、また自分は偉く、尊敬されて当然だと思い、プライドが傷つくことにひと一倍敏感な人間である。そしてまた、当然のごとく女性を蔑視している。そのため年下の若い女性から、金メダルを持ってみますかと、生意気なことを言われと思い込みプライドが傷ついたこの傲慢ジジイは、持たせてもらうといった下でにでることに我慢できず、金メダルをかけてもいいかと求めたのである、いや、おまえが私の首に金メダルをかけろと命じたのだ。ただの小娘、アスリートの金メダリストといっても、総体的に一般人よりも劣る人種なのだから、そのくらいのことをして当然なのだと、そう、まさに、市長にとっては全く自然な反応をしたのである。こいつはほんとうに唾棄すべき人間である。】
アスリートの皆さん、せっかく金メダルを獲っても、そして国民のヒーロー、ヒロインになっても、あなたが女だから、あなたがただのアスリートだから、という理由で、政治家の石頭の先生方には、あなたがを、ただの召使い扱いするだけですよ。
コロナ禍の爆発的感染のもとで、オリンピックに参加しているアスリートに対しては、私は、たとえ本人の責任ではないかもしれないが、反感しかもたないのだが、それでも河村による侮辱的な扱いに対しては、同情を禁じ得ない。早くリコール運動を起こして、あんなバカ市長や辞めさせた方がいい。
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