2026年01月03日

愚かさに国境はない ‘26 迷惑行為

ネットに、迷惑行為によってひどいめにあった、あるいは迷惑行為を機転をきかせたり、勇気をもって止めたという記事を最近よくみかけるようになった。もう一ジャンルとして確立されているといってよい。ただし真実かどうかは疑わしいし、そのほとんどが作り話だと私は思っているが、それはともかく、こんな記事(正確には25年にアップされた記事を採録するもの)があった。
新幹線で「動画を大音量で再生する」外国人観光客に、年配の男性が放った迫力のある一言――年末年始ベスト 日刊SPA! の意見 •1月3日

大事件ばかりがニュースではない、身近な小さな事件の方が人生を左右することも。注目のテーマを取り上げ大反響を呼んだ2025年の仰天ニュースを特別セレクション!(初公開2025年8月22日 記事は取材時の状況)【なお記事で触れられている迷惑行為は2件。タイトルになっている「「動画を大音量で再生する」外国人観光客に、年配の男性が放った迫力のある一言」というのは後半の内容で、方言でやめろとどなったら、その迫力に外国人観光客が気圧されて迷惑行為をやめたということ。ここでは前半の迷惑行為をとりあげる。】
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 ここ数年、外国人観光客が非常に増えた。その影響は電車やバスなどの公共交通機関にも及んでいる。利用に関するマナーや常識は日本と海外で異なる場合が多く、その行動が目に余ることも……。

◆大雨で混乱する駅に響いた異様な声「もうただの悪口ですよ」

 前日からの大雨で熊本市内の交通網は混乱していた。豊肥本線や鹿児島本線は運休。駅の案内表示は赤や黄色の文字で埋まり、改札口前は人であふれていた。

 バス乗り場にも長蛇の列ができ、待ち時間は2時間以上というアナウンスが流れた。

 山田智之(仮名)さんと同僚は「新幹線も今日は動かないかもしれない」と半ば諦め、構内のベンチで状況が落ち着くのを待つことにした。そんな中、改札前で異様な声が響いた。

「ガーッ!ガーッ!」

 振り返ると、40代くらいの外国人男性が両手を腰に当て、顔を真っ赤にして怒鳴る姿が目に入った。

 駅員に向かってまくし立てているようだ。

 対応していたのは20代半ばくらいの若い男性駅員。姿勢を崩さず、繰り返し「申し訳ございません」と頭を下げている。山田さんには何を言っているのか分からなかったが、同僚が小声で解説してくれた。

「あれ、中国語でめちゃくちゃ文句言ってますね。迂回ルートとか聞いてるんじゃなくて、もうただの悪口ですよ」

◆ひたすら耐える駅員、警察官の登場で収束

 怒鳴る男性の身振り手振りからは、状況の説明を聞く姿勢など全くなく、「自分が困っているのはお前のせいだ」と責めているようにしか見えなかった。駅員も反論はせず、ただ耐えるばかり。

 このやりとりは10分、20分と続き、周囲の人も遠巻きに眺め、ため息をつく人やスマホで撮影する人も現れ始めた。山田さんも「さすがにそろそろ限界じゃないか」と思った矢先、男性はさらに声を張り上げた。周囲の空気が一瞬ぴんと張り詰めた。

 しばらく時間が経った頃、駅の奥から制服姿の警察官が2人、小走りで現れた。事情を確認した警察官が、男性の肩に軽く手を置き、静かに話しかける。最初は抵抗していた男性も、周りの視線を意識したのか、急に声を落とし、渋々とそこから離れていった。

 駅員は深く頭を下げたまま、その背中を見送っていた。雨で濡れた床に反射する駅員の姿が、妙に物悲しく見えたという。

 山田さんは同僚と顔を見合わせ、「あれじゃ駅員さんが気の毒すぎる」と呟いた。

 天候による遅延や運休は誰のせいでもない。駅員を責めるのはお門違い、たんなる迷惑行為である。

◆「まるで自宅」車内で自由すぎる外国人観光客【以下略】<文/藤山ムツキ>

この記事が真実かどうかは疑問。筆者が目撃したのならそう書けばいいのだが、仮名の人物を登場させ、小説仕立てにする(内面の語りや同僚との会話―直接話法―まである)のは、どうみても嘘くさい。ただ、それは今回問わないことにして、ここで語られているような迷惑行為は、なにも外国人観光客(中国人観光客)に限ったことではない。日本人での、こうした事態になったときに、駅員をはじめとして、交通機関の関係者にくってかかる人間がいるものだ。愚かさに国境はない。

実際のところ、この記事の最後にあるように「天候による遅延や運休は誰のせいでもない。駅員を責めるのはお門違い、たんなる迷惑行為である」というのは、まったくそのとおりである。よしんば、その運航会社のミスによる遅延や運休だとしても、原因をつくったわけではない駅員を責めるのは間違っている。まさに迷惑行為そのものである。

とはいえ、この記事は嘘としか思えないのだが、同じようなことは常に起こっているということはたしかであって、虚構だが、アリストテレスのいうような蓋然性はまちがいなくある。また外国人観光客による迷惑行為は確かに多いのだが、日本人だって同じことをしているので、外国人差別の意図があったら、この記事は許されないことである。

というのも、そうした迷惑行為をする人を私は個人的にでも知っているからである。

私が、名古屋の高校生だったときのこと。私の通う高校は私の父が務めている会社と方向が同じだったので、朝は、父と同じバスと地下鉄に乗った。ある時、地下鉄がなにか事故で止まって動かなくなった。ホームに停車したままの満員の地下鉄車両のなかで私と父は待つことになったが、数両先の車両の出入り口付近のホームで、駅員を囲んで待ちくたびれた乗客が説明を求めているのを、父はめざとくみつけ、おもむろに、今いる車両から降りて、その駅員のいるところまで歩いて行った。何をするのか、詳しい説明を聞きに行ったのかと思っていたら、やがて父が駅員を一喝した。大声で怒鳴って、叱っているのである。そうしたら、気が済んだのか父は意気揚々と引き上げて私のいる車両にもどってきた。

私は父に、「あの駅員が地下鉄を止めたわけではないので、あんなふうに怒鳴るのは、駅員がかわいそすぎる」と言おうと思ったが、もしこのことを私がほんとうに口に出して言ったら、父は周囲に乗客がいてもかまうことなく私を罵倒して、私は、その駅員以上に気の毒な、かわいそすぎる高校生になっていたにちがいなかった。私にできることといったら、いま気の毒な駅員を一喝してきたこの人(父)と私は何の関係もありませんという顔をして、ただ下を向くか、そっぽを向くことのどちらかであった。

それ以後、私はなんだかんだと理由をつけて、父と同じ時間帯に通学するのをやめた。クズは日本人のなかにもいる。私としては、この場を借りて、父に怒鳴られた交通関係者の方々に、お詫びするしかない。
posted by ohashi at 17:14| コメント | 更新情報をチェックする