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「ボーダーランズ」見どころを紹介! ケイト・ブランシェットら個性派チームのぶっ飛び逃避行
世界中で愛される大人気ゲームを原作に、惑星・パンドラで繰り広げられるスリルとユーモアの旅を描いたアクションアドベンチャー映画「ボーダーランズ」がPrime Videoで配信中。ホラー映画の名手であるイーライ・ロスの監督最新作としても、名優のケイト・ブランシェット主演作としても話題の本作に、注目が集まっている。
物語の始まりは、主人公の賞金稼ぎ・リリス(ケイト・ブランシェット)が宇宙一の大物実業家・アトラス(エドガー・ラミレス)に娘の捜索を依頼されるところから。彼の娘であるタイニー・ティナ(アリアナ・グリーンブラット)が惑星・パンドラで行方不明になったようで、彼女を見つけ出して連れ戻すよう指示される。報酬に満足して依頼を受けたリリスは、自らの故郷でもあるパンドラへ。だが、簡単に思えた任務の裏には、宇宙を揺るがす壮大な陰謀が潜んでいた――。【以下略】
まあ、観てみて面白かったのだが、しかし、アメリカでの評判はすこぶる悪い。今年度の栄誉あるゴールデンラズベリー賞にノミネートされていて、3月1日には受賞するかもしれない。記事にあるように人気のビデオゲームの映画化なのだが、そうした映画としては歴代最悪から二番目の興行収入らしい。
アマゾンのプライムビデオをパソコンとかテレビの画面、タブレットや携帯の画面などで観ていると、充分に面白いのだが、映画館の大きなスクリーンで観ると、さすがに安っぽさが目についてしまうのだろうか。
配役にも問題があるかもしれない。ゲームでは22歳という設定のリリス(主人公)を、映画では55歳のケイト・ブランシェットが演じている。映画のなかではもう若くないというようなことをケイト・ブランシェットは述懐するし、また中高年の女性が主人公で悪いということはないが、ただ、どうみても若い女性という設定のようなので、中高年の女性が女子高校生のコスプレをしているような痛々しさがある。ケイト・ブランシェット自身は、このハードなアクション役をけっこう気に入っているようなのだが、しかし、誰もが、彼女に対して仕事を選んだらと言いたくなる。あるいはケイト・ブランシェットの無駄遣いという気がしてならない。
もう一人の無駄遣いはケヴィン・ハートである。Netfixオリジナルの映画『Lift/リフト』(2024)ではお笑いを封印した役柄で、それはそれでよかったのだが、今回は、お笑いが中途半端。一輪車ロボットのクラップトラップが、ケヴィン・ハートが演じてもいい、うっとうしい色物のロボットだったが、その声をジャック・ブラックが担当していて、お笑いは彼が独占している観がある。そのためケヴィン・ハートはティナ姫を守る兵士くずれのボディガードだけれども、100%のヒーローかというと、その小柄な容姿がややコミカルで、結局、ヒーローなのか道化なのか、どっちつかず。さらにいえばティナ姫を守る巨漢のクリーグと小柄なローランド/ケヴィン・ハートという凸凹コンビも、その特徴をよく活かしていない。ケヴィン・ハートの無駄遣いである。
ジェイミー・リー・カーチス演ずる科学者タニスは、オリジナルのゲームでは、おそらくぶっ飛んだ科学者なのだろうが、映画版ではごくふつうの科学者にすぎない。彼女は、リリス/ケイト・ブランシェットとは母と娘ほどの年齢差なのだが、実年齢では10歳くらいしか離れておらず、しかも映画の中ではタニスとリリスは同じ年齢あるいは同じ世代にみえる。
またリリス/ケイト・ブランシェットの前に、生き別れになった母親がホログラムとなってあらわれるのだが、母親のほうが娘よりも若くみえるのは、設定をくずすことになる。
全体にこじんまりまとまりすぎてしまい、たとえば『マッドマックス』のような荒野での大追跡劇が、あるにはあるのだが、すぐに終わってしまい、あとは廃墟のなかでのドタバタで終わっている。物語は宇宙全体を巻き込む大事件であるのだが、大事件とは裏腹の矮小化された事件の羅列になっている。
とはいえ目まぐるしいアクション場面はそれなりに見ごたえはあるし、このグループで宇宙をところせましと飛び回るという往年のスペースオペラ的(『スター・ウォーズ』的といったほうがわかりやすいか)展開あるいは続編も見込めそうだと思うのだが、しかし、映画のはじめのほうで予想される展開はそうではなかった。
冒頭からケイト・ブランシェットによるナレーションは、設定を説明するのだが、どこか斜に構えていて、こんなくらだらいことを誰が信ずるかというアイロニカルな語調が際立っていて面白く、しかも冒頭登場するリリス/ケイト・ブランシェットは、賞金稼ぎだが、中高年女性で、人生にも仕事にも疲れ、すべての事象を距離を置いてみているのだが、それでいて有能きわまりないという、なかなか魅力的な役柄だった。彼女に仕事を依頼しに来る人間をうっとうしく思い、そのボディガードをさっさと射殺してしまうところも、変にジャンル映画におもねったりしないリアルな人物像となっていて期待がたかまった。だが期待は期待だけで終わり、実現することはなかった。