2024年10月06日

お尻から乗る旅客機

「乗りものニュース」の記事に、こんなのがあった。

「お尻から旅客機乗ります」ユニーク手法なぜ消滅? 胴体最後部ドアのメリットとは2024.10.06 加賀幸雄(旅行ライター)

かつての旅客機では、「エアステアー」と呼ばれる内蔵の階段を使って、機体のおしりから乗り降りする、ユニークな方法を取る機種がありました。この方法はなぜ見かけなくなったのでしょう。

普通は「左舷から乗り込み」
 旅客機で乗客が乗り降りするのは左舷(機体の左側)が一般的ですが、かつては“おしり”から乗り降りする機種がありました。機体に内蔵された「エアステアー」と呼ばれる階段を使った乗降方法で、いまとなってはユニークに思えます。なぜこの方法は見られなくなったのでしょうか。

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1960年代はボーイング727や英国のBAC1-11のように、おしりから「エアステアー」を使って乗り降りできる機体がありました。これらはおもにジェット旅客機でも小型の機種で、機体後部にエンジンを付けた「リアエンジン式」だったことが、共通点として挙げられます。

なぜリアジェット=おしりから乗り降りになったのか

リアエンジン式は、離着陸距離を短くすることができるフラップや前縁スラットをエンジンに邪魔されず主翼へ幅広く付けることができます。この方法は小型のジェット旅客機が発着するような、小規模空港の短い滑走路への発着にもマッチするものでした。また、エンジンが胴体に付く分、全高も低くなり、乗り降りも楽になります。

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胴体の最後部に設置するタイプだけでなく、機体側面の通常の乗降用ドアに階段を取り付けたタイプにも存在します。しかし、リアエンジン式の小型ジェット機は、ほとんどが胴体最後部に設置されてdいます。というのも、こうした機体は胴体が短いうえ、胴体後部にはエンジンがあるため、胴体側面に乗降ドアが付けにくくなります。そのため、最後部中央にドアを設けたのです。全高が低いので「エアステアー」も短くでき、重量を抑えられました。

他方、1960年代当時にエアステアーが重宝されたのは、地方空港を中心として、旅客ビルから直接乗り降りできる搭乗橋(ボーディング・ブリッジ)が満足に整備されていなかったこともあります。旅客の乗降には、機体が到着するたびにタラップ(階段)機体に横付けしなければなりませんが、内蔵式のエアステアーがあるなら横付けする手間も省けます。


しかし、全国の空港で搭乗橋が整備されていくと、搭乗橋を付けられない機体最後部の乗降口は使う機会も減り、やがて旅客機では消えてしまいました。

こんにち、海外の博物館に残されているおしりに乗降口のある機体のエアステアーを昇り機内に入ってみると、徐々に視界に入る座席が新鮮に映ります。それは1960年代、まだ飛行機へ乗る機会が少なかった時代に感じた旅の高揚感に通じるものなのかもしれません。
【了】
この記事に、なにも文句はなく、教えられるところも多いのだが、私自身、機体のお尻に昇降口がある旅客機を利用したことがある。

ただし乗るときは搭乗橋(これってボーディング・ブリッジの日本語訳だと初めて知った)を経て胴体側面のドアから機体内部に入ったと記憶している。羽田空港からである。

席に着いて窓から外をみると、すぐ横にジェット・エンジンの先端がある。実は、この旅行の前に、YS11に乗ったことがあり、そのときプロペラ機のYS11のキーンというエンジン音があまりにうるさくて気分が悪くなったことがあったので、こんなにエンジン近くの席では、エンジン音で吐きそうになるのではないかと心配した。

機種はDC9。いまはなき東亜国内航空の機体だったと思う。胴体後部にエンジンが二つ。記事にあったようなリアエンジンである。

しかし飛んでみてわかった。さすがにダグラスの機体。YS11とは異なり、エンジン音が静か。静かすぎるくらいで驚いた。

そして地方の空港に到着すると、後ろのドアというかお尻にあたる部分のドアが開き、こちから降りるようにと言われ、こんなところにドアがあったのかと驚きつつ、降りた。お尻から搭乗したのではなく、お尻から降りたのである。

乗るときは前方の側面にあるドアから入った。降りるときはうしろの席でもあったので、お尻から降りたのである。

実際には搭乗橋がない空港でも、前方側面のドアから搭乗したと思うし、登場するときはお尻のドアは使わないように思う。そのほうが乗客整理に便利だし、また大きな機体ではないので、ドアをひとつだけ使って問題ないのだろうから。

そのため「こんにち、海外の博物館に残されているおしりに乗降口のある機体のエアステアーを昇り機内に入ってみると、徐々に視界に入る座席が新鮮に映ります。それは1960年代、まだ飛行機へ乗る機会が少なかった時代に感じた旅の高揚感に通じるものなのかもしれません。」という記事にあるような高揚感はなかった。

繰り返すが、乗るときは前から。搭乗用にお尻のドアを使うと、客室乗務員を2か所に配置することになり、面倒なことになる。

ちなみにお尻のドアから降りた私には、こじんまりとしたターミナルの建物がみえた。そこに歩いてゆくのかと思ったら、送迎バスがやってきた。それに乗るようにいわれる。目の前の送迎デッキのあるターミナル・ビルとは別のビルがあって、そちらに、まわるのだろうと思ったのだが、バスは結局その小さなビルに横づけになった。乗車時間30秒もなかったと思う。100メートルもない、歩いていけるところを、なぜバスを使う。それもマイクロバスではなく、路線バスような大型バスを使うのである。

予想外に静かなジェットエンジン。お尻から降りる旅客機。すぐ目の前にあるターミナル・ビルに行くのにバスに乗らされる。飛行機の到着時間と列車の時間がまったく連動していなくて1時間待たされる。けっこう不思議な旅のはじまりだった。
posted by ohashi at 23:52| コメント | 更新情報をチェックする