2022年05月28日

レイ・リオッタ

レイ・リオッタ(Ray Liotta、1954年12月18日 - 2022年5月26日)が亡くなった。享年67歳。私よりも十歳くらい年上かと思っていたら、私の方が年上だったとわかり驚いている。ネット記事では『グッドフェローズ』のレイ・リオッタと紹介しているのだが、私にとってレイ・リオッタは、『サムシング・ワイルド』(1986)のレイ・リオッタである。

リアル・タイムで観た映画ではない。90年代にイギリスでテレビで放送されたものを観た。『サムシング・ワイルド』は、ジェフ・ダニエルズ、メラニー・グリフィス、レイ・リオッタの三人の芝居で、小ぶりの映画でもあって、テレビでみるにもちょうどよいスケールであった。主演の三人は、1986年当時、あるいは1990年代初期には、まだそれほど名前を知られていなかったと思うし、レイ・リオッタにいたっては、これが映画デビューではないが、主役クラスとしては初出演映画であった(演劇クラスでいっしょだったメラニー・グリフィスの推薦で出演が決まったとのこと)。

だから私にとっては知らない俳優3人のドラマで新鮮な感じがした。しかも、この映画は、80年代のカルト映画のひとつでもあり、さらにいえば、監督がジョナサン・デミ。そう、『羊たちの沈黙』が話題となり人気を博したことから、デミ監督の過去の作品がテレビでも放送されることになったのだ。

小ぶりの映画といったが、しかし、ラブコメめいた始まりから、ダークサイドへと落ちてゆく展開に緊迫感があり、演出も緻密かつ繊細で、今見ても、これがカルト映画となったことは納得できるように思う。そして何よりも、この映画におけるレイ・リオッタの強烈な印象――邪悪で卑劣極まりなく、兇悪そのもので、しかもセクシー――は、まさに圧巻であり、トラウマになってもおかしくないほどであった。

以後、レイ・リオッタはクセの強い悪役を多く演ずることになるが、悪役以外の役も演じて、幅広い役柄をこなせる俳優となった。『グッドフェローズ』は、出世作といわれているが、またすぐれた映画だと思うが、レイ・リオッタのアグレッシヴな感じは、役柄から抑えられているところがある――不穏な感じは相変わらずだが。

比較的最近ではテレビドラマ『シェイズ・オブ・ブルー ブルックリン警察』でジェニファー・ロペスと共演していたことは知っていた。映画では『マリッジ・ストーリー』(内容は「離婚物語」だったが)に弁護士役で登場したときは、恰幅がよすぎて、誰だかはすぐにわからなかったが、クセの強さは相変わらずで、そこから誰だかを認識できた。

そう私にとってレイ・リオッタは、最後にまでサムシング・ワイルドたったというか、サムシング・ワイルドとしてしか想起できない貴重な存在・俳優だった。

冥福を祈りたい。
posted by ohashi at 17:52| コメント | 更新情報をチェックする