2022年04月19日

セカンドチャンス2

『デジャヴ』(韓国テレビ映画)

セカンド・チャンス物の物語・映画の基本は、最初は悲劇、二番目は喜劇。喜劇というのはハッピーエンディングということだが、この原則に反する異色作があるので触れておきたい。

面白い、セカンド・チャンス物、あるいはタイム・ループ物というかタイム・リープ物ではあっても、2004年の65分の韓国テレビ映画(KBS)で、知る人は少ないと思う。韓国映画や韓国テレビに詳しくない私が、なぜ知っているのかというと、『韓流ロマンスドラマ名作選 デジャヴ』というDVDが販売されているからである(レンタル、購入可能、配信はされていないようだ)。

女優としてハン・ジミン(『虐待の証明』2018)が出演。彼女と結ばれるのがキム・フンス。今から見ると、どちらも若いという幼い感じがするし、二人のことを知らなくとも、演技者としてはまだ未熟な感じがしないでもない。だから、それほどお薦めの映画ではないのだが、セカンド・チャンス物としてみると予想を裏切るところがあって面白い。

AMAZONのDVDの通販ページによる紹介。購入者のレヴューはない。

トップ韓流スターに愛されてきた、ハン・ジミン主演の美しいメロドラマ。善良でおっちょこちょいなドング(キム・フンス)は友達との飲み会の後、野宿をすることに。目を覚ましたドングはいつものように出社し、同じ証券会社に勤める恋人スヨン(ハン・ジミン)と愛情を深めていく。ある日、彼はスヨンの交通事故を目撃して、助からないかもと聞かされ病院で気を失う。眠りから目を覚ましたドング。そこは飲み会の夜、野宿した場所だった…。


こうしてタイムリープして二番目の数日が始まる。ただしドング/キム・フンスは、自分がタイプリープして数日前に戻ったことを知らないため、最初、何が起こっているのかわらない。交通事故で瀕死の重傷を負った恋人が、奇跡的に生き延びて、すでに会社に出勤していると勘違いする。また、タイム・リープした数日前の世界は、もといた世界とはどこかちがっていて、ドング/キム・フンスとスヨン/ハン・ジミンは、会社の先輩・後輩であっても、恋人どうしではなく、ドングの片想いのようだ。

なるほど最初の数日間シークエンスは、恋人のスヨンが交通事故で瀕死の重傷を負い生死の境をさまよっているところで終わる。最初は確かに悲劇である。しかし、交通事故にあう前のカップルは、相思相愛で、軽薄なラブコメ・カップルであり、観ていて恥ずかしくなる、あるいはうんざりするほどの、いちゃいちゃぶりである。この部分で、もう観るのをやめる、気の短い視聴者がいてもおかしくないと思う。つまり演出がよくないと思うので(いまでこそ、スターのふたりも、この時期、新人に近い)。

しかしタイムリープして数日前にもどってからの物語では、男性社員ドングはただ片想いなだけで、相手の女性スヨンは、支店長に気にいられてプロポーズされ、それを受けるところまでいくので、三角関係にすらならない苦い恋の敗北が待っている。女性への片想いと、気付いてくれない相手への焦燥感、そして絶望と諦念という男性社員ドングの目線で描かれる物語は一挙に深刻さをまし、暗い色調を帯び始める。

そうタイム・リープ前の軽いラブコメ部分は、ある種のフリであり、その軽佻浮薄な陽気さは、意図的に仕組まれたものだったのだ。後半において映画の強度がマックスになる。映画とはメランコリーの風景というのは私の持論(正直言えば私だけのものではない)だが、まさに後半のこの映画はメランコリーの風景全開となる。韓国映画としても、ここでお得意のお涙頂戴的センチメンタル度全開となる。最初は喜劇、二番目は悲劇になる。どうやらこれではセカンドチャンス物になりえない。

そうセカンドチャンス物ではない。なるほど前半では、恋人の彼女が交通事故に巻き込まれる。【以下ネタバレWarning:Spoiler】タイム・リープしたあとは、彼女を交通事故から救おうとするとなれば、王道のタイム・リープ、タイム・ループ、セカンド・チャンス物だが、二番目の世界は、彼女は恋人ですらなく、支店長と婚約してしまうのであう。この男性社員ドングにとって、彼女スヨンを助けることなど、念頭にはない。ただし、最初の世界と似たような展開になっていることを自覚したドングは、スヨンを交通事故から救うべく、彼女を押しのけ、みずからがトラックに轢かれるのである――これぞ映画的転回。最初、彼は、彼女が轢かれるところを傍観するしかなかったのだから。

ドングは一命をとりとめ、その気持ちに気づいた彼女スヨンは、ドングと結ばれることになる。最初は悲劇で終わる喜劇、二番目は喜劇で終わる悲劇。ということになる。

ただし最後の結末は、曖昧にぼかす仕掛けが講じられている。実は最初の悲劇に終わる軽薄なラブコメの部分は、交通事故で重傷を負った男性社員の見た夢(あるいは、超越的存在によって見させられた夢)であって、現実は、二人は恋人ですらない会社の先輩・後輩であり、男性側の自己犠牲によって女性を助けることになり、それによって、二人が結ばれるであろうということかもしれない(あるいは暗い想像をすれば、男性は交通事故で死ぬが、その最後に女性と恋人になっている夢を見る/見させられる)。

タイムリープはしていない。ただ現実と夢物語のふたつの世界があるだけである。実際、男性は酔って路上で寝ていたのであって、全体がタイムリープというよりも夢落ちであるという可能性も匂わされている。

したがって実は、後半が最初の悲劇部分(男性は自身が交通事故に巻き込まれる)、そして前半のラブコメが、喜劇的セカンドチャンスの部分とみることもできる。そうなると大堂のパターンからははずれていないことになる。

興味があればご覧あれ。
posted by ohashi at 08:13| 映画 タイムループ | 更新情報をチェックする