2021年11月03日

『The Loop 永遠の夏休み』

原題 Mine Games 監督リチャード・グレイ。1時間32分。2012年アメリカ映画。

おそらくこの映画も、誰もがみたくてたまらない映画ではないと思うので、ネタバレを気にせずに書いてもいいようなものだが、まあ、それはしない。

タイム・ループ映画である。『永遠の夏休み』などという日本語のタイトルがついているので、これはタイム・ループ映画の古典的傑作アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(押井守監督1984)が、そうであるような、楽しい時間(たとえば夏休み)がリピートされる、どちらかというと明るい映画かと思ったら、まったく違うので、観る人(そんなにいないと思うが)は要注意。

原題はMine Games。訳せば鉱山ゲームあるいは坑道ゲーム(ただし、それ以外の意味もある)。7人の若者が避暑にやってくる森と湖に囲まれたロッジ(キャビン?)の近くに廃坑になった鉱山の入口をみつけ、その坑道を探険していくうちに恐怖の事件に巻き込まれていくというもの。

最初、この映画は、怖がらせるものの、惨劇にいたる寸前で終わるか、惨劇を回避して終わる。まあ、寸止めの映画かと思った。そう思ったのは、けっこう寸止めはつづくこともあるが、登場する7人の若者たちの、精神年齢がまるで小学生のような言動に対するイライラ感ともつながっている。この小学生のような若者たちだからこそホラーになるともいえるのだが、同時に、この小学生たちにはホラーは似合わないともいえるので。とまれ、最終的には、約束の惨劇になりホラー映画となる。

ただし同じ2012年にアメリカで公開された『キャビン』(The Cabin in the Woods――ちなみにこのタイトルはまた、この映画『永遠の夏休み』のほうにもあてはまる)にみられたような、最初ホラー映画のパロディ/パスティーシュかと観客を誘導しながら、気付くとジャンルがSF化していて、最後に人類滅亡にいたるというようなとんでもない展開は、この映画にはない。

この映画がタイム・ループ映画といえるのは、彼ら七人が巻き込まれる惨劇が、すでに起こっているからである。彼らのうち三人は坑道のなかに自分の死体を発見する。また最後に登場人物の二人は、このロッジにやってくる自分たちの車をみる。すでに起こった事件を、自分たちが反復することになり、さらに次の自分たちも到着する……。

これはループ物の映画『トライアングル』(英・オーストラリア映画2009)と同じような設定である。つまり殺されてリセットされてもう一度同じ日とか同じ事件を繰り返すのではなく、同じ事件が不条理なまでに反復されていくのであり、そこで人は、前の事件で殺された自分と、これから殺されに来る未来の自分とに出会うことになる。

ただ『トライアングル』風のタイム・リープでは、これまで殺された人びとというか、同じ人物の死体がやまのように放置されるのだが(『トライアングル』の見どころのひとつ)、この映画では、放置される死体は、それぞれ一体なので、事件は二度目であることが暗示される。延々と起こっているわけではない。一見、n番目の事件であるように思われるのだが、だったら死体が山のように積み重なっているはずで、また監禁されて出られなくなった同一人物も山のようにいるはずなのだが、それはない。しかも映画の最後になくてもいい場面をひとつ付け加えたために、この事件は次回で終わるという暗示もある――というか次回は起こらないという暗示もある。

SF映画『グラビディ 繰り返される宇宙』(2018)では、宇宙に時空間が変調をきたしている領域があり、そこに紛れ込むと永遠に同じ惨劇を繰り返すという設定なのだが(遠い未来のSFなので、そんなものかと納得してしまうのが不思議なところ)、ワシントン州南部のギフォード・ピンチョット国立森林公園でのロケで、廃坑が貧弱すぎて、超自然現象が発生するとか異世界に通じているという雰囲気が希薄なような気もして、なぜ同じ事件が反復されるのか、なっとくできないまま終わる。細部は丁寧に作り込まれ、伏線も回収されるので惜しい気がする。

なお、この映画は、昼間の光景は明るく緑が目に染みるくらいの大自然感が横溢しているのだが、夜の戸外とか、坑道の中の場面は、暗すぎて、ほんとうに暗すぎて、よく見えない。予告編では、もう少し明るくして暗くて見えに部分をなくしているのだが。これは多くのレヴューアーが指摘する映画の欠点である。

ただ、こんなふうに書いてしまうと誰もこの映画を観なくなる可能性があるのだが、しかし、今見ると見どころはある。イーサン・ペックが出演しているのである。その低い声は2012年も健在だった。イーサン・ペックって誰かと思うかもしれないが、『スタートレック:ディスカバリー』シーズン2で若きスポックを演じたといえば、わかるだろうか。たぶん彼の深く低い声でスポック役に選ばれたのではないかと思う。また、さらにいえば、イーサン・ペックは、グレゴリー・ペックの孫としても有名である
posted by ohashi at 18:32| 映画 タイムループ | 更新情報をチェックする