2021年03月13日

放射能入り牛乳 2 付記

まだ映画『復讐捜査線』のブルーレイをみつけていないので、確認のためにみていないので、違っていることもあるかもしれないが、ここで一応補足を。

この映画のなかで、原子力関連の企業の社長に放射能汚染された牛乳を飲ませるというのは、私は心の中で、拍手喝采したのだが、なんちゅう話だとあきれた人も多いかと思う。そのため、ここで補足を。

ただしネタバレなので注意。Warning: Spoiler

映画のなかでは、放射能汚染された牛乳を飲ませてはいない。メル・ギブソン扮する刑事は、ただ、だまって牛乳を飲ませるのである。またその牛乳は、ふつうの牛乳である。放射能で汚染された牛乳ではない。だいいち、そんなものどうやって手に入れるのだろうか。

ところが悪徳社長のほうは、メル・ギブソンが、娘の復讐のために、娘に死をもたらした放射能汚染された牛乳を自分にむりやり飲ませたのだと思い込み、いそいで放射能を緩和する薬を飲む。しかし、ふつうなら牛乳を飲まされても、放射能を緩和する薬は飲もうとは思わない。このあわてふためく姿をみて、この社長が、放射能汚染された牛乳で殺人をおこなった首謀者であることをメル・ギブソンは確信する。

そして逮捕するかというと、その場で、射殺する。いくら極悪非道な罪人とはいえ、無抵抗の犯人を射殺することによって、この刑事(メル・ギブソン)の運命は決まる。エンターテインメント映画は、ポエティック・ジャスティスを重視する。非合法な方法で犯人を殺したメル・ギブソンは映画の最後で生き残ることはない(たとえばハムレットが生き残れないのは、劇の途中で、あやまって人を殺してしまうからである。これによってハムレットは最後には死ぬだろうと観客には予想がつく)。

実際、メル・ギブソンは、粘り強い捜査によって犯人側に恐れられ憎まれ、放射能汚染された牛乳を知らずに飲まされてしまうため、健康がむしばまれ、もう余命いくばくもなくなっている。彼は最後の力をふりしぼって復讐を遂げるのである。

映画の最後で、メル・ギブソンの病室に、すでに死んだ娘が迎えにくる。ふたりは手に手をとって病室から抜け出してゆく。メル・ギブソンは死んで、殺された娘といっしょに天国に行くということになる。

この娘を『インスティンクト』のボヤノ・ノヴァコヴィッチが演じていたのだが、顔がどうしても思い出せない。

なお「復讐捜査線」という間抜けなタイトルは、映画会社が「捜査線」好きなことからきているのかもしれない。

『夜の大捜査線』という1968年にアカデミー作品賞や主演男優賞をとった有名な映画がある。黒人の名優シドニー・ポワチエ扮する敏腕刑事が、人種差別の激しい南部の田舎町に、事件の捜査のためやってくるのだが、地元警察の協力を得られず、単身捜査をするという映画のタイトル(原題は「夜の熱気のなかで」)が、あろうことか「夜の大捜査線」――これはけっこう有名な話(笑い話)になっている。まあ、この作品の影響で、日本のテレビドラマでも『踊る大捜査線』というのがあったのだが、その影響なのかもしれない、『復讐捜査線』というタイトルが。
posted by ohashi at 22:54| 映画・コメント | 更新情報をチェックする