2021年03月12日

放射能入り牛乳

いまCSで『インスティンクト』を放送中だが、昨年の今頃、シーズン2のDVD/ブルーレイが発売/レンタル開始したので、日本でもWOWOWなどで放送されたものの再放送のようだが、今放送中のシーズン2(アメリカでは2019年に放送)で打ち切りというのは残念である。

アラン・カミング(『グッド・ワイフ』の頃よりもさらに老けた感じがする.-実年齢よりも10歳くらい上の感じがする)と、ボヤナ・ノヴァコビッチのペアは、こうしたバディ物の常套的設定で、仲がいいのだけれど性的関係はないという,つかず離れずの友情関係を成立させるために、ゲイの男性とストレートの女性捜査官という関係が実に面白かったのだが。

そのボヤナ・ノヴァコヴィッチなのだが、どこかで見たという年寄り独特のあてにならない既視感にとらわれていたが、『アイ、トーニャ-史上最大のスキャンダル-』に出演していた。トーニャのコーチを自分から買って出る役柄だったが、その間の詳しい事情は映画のなかでは語られなかったように記憶している。ボヤナ・ノヴァコヴィッチの存在が気になったのは、実際のトーニャ・ハーディングは、映画のなかでマーゴット・ロビーが演じているのだが、実際のトーニャ・ハーディングは、彼女よりも、ボヤナ・ノヴァコビッチのほうが似ているという感じがしたからである。

21世紀になって実在のトーニャ・ハーディングは、女子プロレスに参加したり、ボクシングの試合をしたりして、フィギュアスケートの選手だったとはとても思えない、たくましすぎる体型になっていたが、映画のなかでのマーゴット・ロビーもフィギュアの選手とは思えない、たくましい体つきになっていた。しかし、私はリアル・タイムでトーニャ・ハーディングをテレビで見ていたが、もちろん、当時の彼女は、いかにも、フィギュアスケートの選手のらしいスマートな体型で、女子プロレスラー/マーゴット・ロビー系統とはまったく違っていた。だからマーゴット・ロビー扮するトーニャ・ハーディングは違うぞと頭のなかで文句を言い続けていて、その分、映画に入り込めなかった記憶がある。

で、ボヤナ・ノヴァコビッチの出演映画だが地球侵略物『スカイラン』の続編『スカイラン-奪還』に出演していた。『スカイライン』は映画館でみたが、続編は公開されたのかどうか覚えてないが、映画館で上映されても出向かなかったと思う映画で、amazonプライムでみた。しかし彼女の出演作で評判がよいのは『デビル』とか『シークレット・パーティ』なのだが、それ以外の映画出演については心当たりはなかったので、調べてみたら『復讐走査線』(Edge of Darkness メル・ギブソン主演2010年、日本公開2011年)に出演していた。まったく記憶にないのだが、メル・ギブソンの娘役? それなら覚えている。どういう役回りだったのかもしっかりと。映画の最初のほうで殺されてしまうのだが、最後にも登場する。病室のメル・ギブソンのもとに訪れた娘は父親の手をとって病室から抜け出していくのである(これはメル・ギブソンが最後に死んだという暗示)。

ここまで印象的な役なのだから、顔を覚えていそうだが、どうしても思い浮かばない。もちろん映画を見直してみれば、そこにボヤナ・ノヴァコヴィッチがいるはずなのだが、しかし、いまの私の頭のなかでは、メル・ギブソンの娘役の女性の顔は、まったくの空白のままである。

今回、amazonで中古のDVDでも購入するか、どこかでレンタルして見直してみようかと思ったのだが、amazonからDVDを以前に購入していたことがわかった。結局、封を切らずに、未視聴状態になっている。捜すのに時間がかかりそうだ。

したがって見つかって見直さないとなんとも言えないところがあるのだが、この映画は、衝撃的な内容ではあった。とりわけ2011年には。

Amazonから映画の内容を引用したい――

【STORY】
娘を殺したのは誰だ! ?/今、父の怒りが巨大な陰謀を打ち砕く! !

ボストン警察殺人課のベテラン刑事トーマス・クレイブンは、最愛の娘を自宅の玄関で、それも目の前で射殺されてしまう。
事件は彼に恨みを持つものの犯行と思われた。
だが、彼は独自に捜査を開始し、事件の陰に、娘が勤務していた軍需企業の犯罪的行為と国家の安全保障にまで影響を及ぼす巨大な陰謀が潜んでおり、娘は真実を暴露しようとして謀殺されたことを知る。
復讐の鬼と化したクレイブンは、様々な罠や妨害をものともせず、事件の黒幕に迫っていく。
犯人の逮捕でも、事件の解決でもなく、ただ復讐のためだけに………。


軍需企業の犯罪的行為がなんであったのか覚えていないのだが、秘密を知られた企業側は、放射能汚染された牛乳を飲ませる(もちろん当人は、なにも知らないまま飲んでしまう)ことで命を奪うという卑劣な手段に訴える。

ちなみにamazonのレビューにつぎような記事があった。

モンテ・ヤマサキ
5つ星のうち5.0 これは相当良いですよ。

2017年11月29日に日本でレビュー済み
この邦題をつけたのは間違いなくアホで、映画をぼうとくしている非道残虐行為だと思います。こんなアホどもは、この映画内でメル・ギブソンに撃たれて死にますがね。

マッドマックス4なんざどうでもよい。あんなものはクソだよ。マックスが本当に帰ってきたぞよ。喜べ。

俺はここでメル・ギブソンに俳優の枠を超えたものを受け取ったよ。三船と同じようにな。

2019年、今日、今、この映画を見直していて、フッと気付いた。。。こんなフザけた邦題をつけてカモフラージュでもせんことには、この国でマスメディアにのせるのは不可能だということなのではないかと。。。それくらいヤバイ内容だったのだと。。。ありえるぞ


何がやばかったのか、正確に思い出せないのが、今はつらいが、たしかにヤバイ内容だったのである。この映画のなかで圧巻なのは、メル・ギブソンが企業のトップの屋敷に単身殴り込み、社長を追い詰め、これを飲めと、牛乳瓶から白い牛乳をむりやし飲ませるシーンである。

牛乳の白さ、そして放射能汚染された牛乳のまがまがしさ。そして復讐の憤怒に身を委ねて社長に汚染された牛乳を飲ませる場面。私は、映画館で立ち上がって拍手しようと思ったくらいだ。ほんとうにいいぞ、と声が出そうになった。

映画を見直してみないとなんともいえないのだが、この映画では放射能汚染牛乳を飲まさる社長は、原発もつくっていた電力会社のトップではなかったのか。ちがっているかもしれないのだが、ただ、ちがっていても、放射能で汚染された作物や、放射能による汚染は、2011年の後半、大きな問題となり、福島産の食材が買われなくなったり、あるいは諸外国からも日本の国土の放射能汚染が問題視され、日本人の誰もが、放射能汚染に敏感になり、また、その元凶ともいえる原子力発電所や原子力産業、東京電力にたいしては、怒りをくすぶらせていたような気がする。

当時、学生向けの専修課程(英語英米文学専修課程)案内の冊子に、卒業生の就職先をリストアップする頁があったのだが、その頁から「東京電力」を研究室側で削除した記憶がある。実は、すくなくとも5年以上、ひょっとしたら21世紀になってから、東京電力に就職した専修課程卒業生はいなかったのではないかと思いいたったからである。調べてみたら、たしかに東電に就職した学生は10年以上いなかった。

ずいぶん昔にはいたので、就職先のひとつに「東京電力」というのを、どちらかというと誇らしげに掲載していたのだ。しかし、2011年度になってみると、この記載は、なにか不吉な、まがまがしさを帯びるようになった。反原発派の私としては、東京電力は悪徳企業以外の何物でもないのだが、それとは別に、2011年の後半には「東京電力」というのは恥ずかしい名前となった。そして繰り返すが、卒業生がここ何年も就職していないということで、実情に即していない記載は削除するということで、「東京電力」という名前は、専修課程案内の卒業生就職先リストから消えた。

映画のなかの悪徳企業が電力会社ではなかったとしても、放射能汚染した食物(ここでは牛乳)を、凶悪な悪人の社長の喉に流し込むことは、見ている側にとっては、電力会社の社長に、放射能汚染した食物を食べさせてて責任をとらせるという、溜飲が下がる、まさにカタルシス以外の何物でもなかった。

だから、この映画は2011年を思い出して、いまこそ見直してみるべき映画である。Amazonのレヴューアーが述べているように、Edge of Darknessを「復讐走査線」とふざけたタイトルをつけた映画会社こそ、この映画のやばさを、この映画の社会的告発の鋭さと強度を把握していたのかもしれない。

そう思い出してきた。これは電力会社というよりも、また軍需企業でもなく、原子力関連企業について、その闇を暴いた映画でもあったのだ。
posted by ohashi at 00:46| 映画・コメント | 更新情報をチェックする