少し前だが、テレビで練馬区江古田のことを取り上げていたので、なつかしく見た。話題の中心は、江古田というよりも、江古田にある日大芸術学部のことであり、日大芸術学部の学生あるいは卒業生は、自分の大学を日大とはいわずに、ニチゲイ(日芸)ということが取り上げられていた。
懐かしいというのは、私は学生の頃というか大学院生の頃、江古田に住んでいた。駅の北側に住んでいて、駅への行き帰りには、日大芸術学部の前をとおっていた。日大芸術学部の学生が、母校を日大といわずに、なぜニチゲイというのかは、その理由はともかく、地元でも、ニチゲイといって親しまれていたし、私も、江古田に住んでいた頃は、ニチゲイと言っていた。
もちろん私は、ニチゲイの関係者ではないが、ニチゲイがあるおかげで、私も、いろいろ恩恵にあずかった。というのも大学の近隣の書店は、通常の街の書店にはない品揃えになっているからである。
以前、文京区、根津の書店に、たまたま入ったら、そこに東大文学部の先生方の本がいろいろそろえてあった。そのラインアップは、東大生協の書籍売り場よりも充実していて、あの先生がこういう本を出しているのかと、知らなかった本を思わず手にとった記憶がある。
それと同じで、日芸のある江古田の街の書店は、通常の書店にはない品揃えで私にはありがたかった。街の書店にふつう置いてあるのは、週刊誌や雑誌。そして漫画本。実用書にエロ本だが、江古田に複数ある書店には、通常の街の書店にはない、映画と演劇関係の本があり、さらにそれに関連した人文系の思想書などもあって、私には、ほんとうにありがたかった。実際、私が院生時代に購入した映画や演劇の日本語の本の多くは江古田の書店で購入したものである。
まあ日芸のなかの書店には、もっといろいろ面白い本があるのではないかと思ったが、部外者が中に入るのは、とりわけ私立大学の場合は、むつかしい。部外者が自由に出入りできるのは、東大の本郷キャンパスくらいである(駒場キャンパスは門のところに警備員がいる、べつの学生証とか職員証、身分証をみせろといわれたことはないが、なんとなく部外者は入りにくい雰囲気がある)
――以前、私が在職中、本郷キャンパスで、自転車に乗った女子大生と中高年の女性とが接触して、中高年の女性のほうが怪我をして、救急車が呼ばれたことがあった。あとで調べたら、自転車に乗った女子大生も、また怪我をした中高年の女性も、ふたりとも東大生でもなければ、東大の関係者でもなった。まったく部外者の二人が、キャンパス内で事故を起こしている。こういうことは私立大学のキャンパスでは、ふつう考えられないことである。