2020年11月03日

最底辺

シェイクスピアの『リア王』のなかに、悲惨な現実に直面した人物が、最悪のものを経験したから、あとは落ちることなく上昇するしかないと甘い期待を抱いていると、予想外に、さらなる悲惨な状況に直面するという場面がある。

そしてこれが最悪だと言っていられるあいだは、最悪ではないというような台詞を口にするだが、これは下には下があるという意味と、ほんとうの最悪状態に達すれば、もはや言葉を失ってしまう、言葉で記述できる限り、まだ希望があるという二つの意味が考えられる。

私としては、下には下があるという意味がわかりやすいのだが……。実際、安倍政権が終わって、戦後最悪の腐敗政権もこれで終わる、これ以上ひどい政権はもう登場しないだろうと語ったが、なんという甘い判断だったのだろう。安倍政権以上にひどい腐敗政権が存在した。下には下があった。そして、下には下があることを忘れて、これで最悪などと軽々しく言ってはいけないことを痛感した。まるで『リア王』の登場人物ではないか(エドガーのことだが)。

そして唯一の希望は、これがいまのところ最悪の政権だと言っていられるので、まだ全体主義に私が押しつぶされていないということである。ほんとうに押しつぶされる頃には、私の寿命も尽きているだろうから、あまり心配はしていないが。

posted by ohashi at 14:51| コメント | 更新情報をチェックする