2017年01月05日

『マンハンター』

アレックス・コックスの『ムーヴィードローム』について触れたので、思い出話をひとつ。このテレビ番組でみた映画のなかで、けっこう衝撃的だった映画に、マイケル・マン監督『マンハンター』があって、この映画、ぼんやりみはじめて、予想外に怖い映画であって驚いた。犯人像は、異様すぎて、言葉を失ったし、繰り返し示される一家惨殺現場の生々しいドキュメンタリー風の映像は、リアすぎて、目を覆う感じだったし、また、捜査官にアドヴァイスをあたえる謎の受刑者がいて(いまでは、こういう設定は日本のドラマでも多くて、珍しくもなかったが、当時は新鮮だった)、不思議な感じがした。捜査官が、受刑者の指示とか暗示によって、捜査をすすめていく? そう、これは『羊たちの沈黙』の前作、『レッド・ドラゴン』の映画化だった。


トマス・ハリス原作の『レッド・ドラゴン』は、すでに2度映画化され、また連続テレビドラマ化もされているのだが、これはその最初のもの。マイケル・マン監督の骨太の演出によって不気味で迫力のあるは異色映画になっていた。ちなみにレクター博士は、ブライアン・コックスが演じていて、次作の『羊たちの沈黙』ではレクター博士は、アンソニー・ホプキンズ。レクター博士といった異様な怪人ともいえる人物が、どうして二作ともイギリス人俳優なのか、理由はよくわからないのだが。


この『マンハンター』は、『刑事グラハム/凍りついた欲望』のタイトルで1988年に日本公開。ただし当時、私は、映画をみてる時間もなくて、公開されたことすら知らず、イギリスのテレビで、カルト映画を紹介するアレックス・コックスの番組で、はじめて、この映画を知ることになり、全編見ることになった。


のちに、この映画は、『羊たちの沈黙』のヒットによって、『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』と改題されビデオ化再発売されたとのこと。また私がイギリスのテレビでみたのは、『羊たちの沈黙』のヒットによって、過去の前作にも光が当たったという事情によるのかもしれないが。


原作では、ハンニバル・レクターとかかわる捜査官のウィル・グレアムは、最後に、精神的に破綻してしまうのだが、また、そのことがあって、次作の『羊たちの沈黙』でも、クラリス・スターリングがレクター博士とかかわることで、おかしくなるという暗い可能性がつねについてまわった。いっぽう映画版『マン・ハンター』では、グレアムは精神的に崩壊することはない(なおマッツ・ミケルセンがレクター博士を、グレアム捜査官をヒュー・ダーシーが演ずる連続テレビドラマ版『ハンニバル』は、どうなっているのかは未見なのでわからず)。


ちなにに『マンハンター』でウィル・グレアム捜査官を演じたのは、ウィリアム・ピーターセン。はじめて観た時は、私の知らない俳優で、その後、テレビの仕事が多かったようで、日本では、映画館などで見ることはなかった。しかし、私は、奇しくも再会した。テレビで。


とはいえウィリアム・ピーターセンって誰だといぶかる人も多かろう。


CIS科学捜査官』(最初のラスベガスを舞台にしているシリーズ)で、日本版では「主任」と呼ばれているギル・グリッソム博士、それがウィリアム・ピーターセンだった。『マンハンター』の頃とくらべれば、歳をとった以上に、太ったのだが、しかし、それでも、すぐに、ウィリアム・ピーターセン/グレアム捜査官だとわかった。CSIシリーズは、本国では、2016年をもって終了したようだが、日本では、再放送がいまもつづいている。グリッソム博士をみるたびに、『マン・ハンター』のことを、それをテレビで見たイギリスでの日々を今も思い出す。


posted by ohashi at 04:25| 日記 | 更新情報をチェックする