ブラナー・シアター・ライブで、ジョン・オズボーン原作の『エンターテイナー』をみる。作品そのものは大作で、ミュージックホール芸人の家の居間だけが舞台なのだが、そこに、ミュージックホールでのパフォーマンスが重なってくる。ケネス・ブラナーの芸達者ぶりが堪能できるのだが、まあ、それは当然なことであるのだが、ジョン・オズボーンの作品としてみると、たとえば『怒りを込めてふりかえれ』とはずいぶん異なると同時に、その延長線上にもあるという差異と類似性の両方が際立つ作品でもあったことがなんともすばらしい。
ただ、作品そのものについては、いろいろ思うところもあって、調べてみたいので、次回に。とりあえずは、今回のシアターライブで気になったことをだけを。まあ、どうでもいいことなので、読まないでください。
幕間というか前半と後半の休憩時間は20分くらい。その間、ギャリックシアターの客席を天井のカメラがうつしだすのだが、それを休憩時間にぼんやりみていたら、一階客席のあるフロアーの角で、なにかを売っている。小さなワゴンで、係員が、どうやら透明のカップに入ったアイスクリームを売っているのだ。けっこうみんな買っていて、休憩時間の終わりにはほぼ完売状態だった。
それをみてなつかしい思いがした。私もイギリスの劇場では、幕間にアイスクリームを買って食べていた。日本の劇場では、幕間にアイスクリームは、食べないのだが(糖尿なので、甘いものはあまり食べてはいけない)、それでも映画館では、アイスクリームを食べることがある。映画館には幕間はないので、映画が始まる前。また夏でも冬でも。
『ベストセラー』という映画をシネャンテでみたとき、いっしょに行ったわけではないが、私の知り合いの男性も同じ回でみていて、彼は、こういう文芸映画は、通常の映画とは異なる客層かもしれない、どういう人たちが見に来ているのかと周囲を観察したら、前の方の席で、なにか食っている客がいる。周囲をみても、たとえばポップ・コーンすらもちこんだり食べている客もいない。いったい何を食べているのかと、ひょっとしたら持ち込んではいけないものを食べているのかと、かなり気になったらしいのだが、すみません、それはアイスクリームを食べていた私でした。
そもそも、こんな冬にアイスクリームを購入する客はいないみたいで、メニューにあったので注文したら、紙のカップのアイスクリームが出てくるのに異様に時間がかかった。すみません。面倒をかけて。しかも座席でも周囲から奇異な目で見られていたかもしれないので。でも、彼のいる席からどうして、見えたのか。もちろんそれが私だったとは気づかなくて、映画が終わって立ち上がってから、それが私だとわかったと話してくれたのだが。
今回の『エンターテイナー』の幕間の最後で、画面に、作品の時代背景をなどを簡単なクイズ形式で説明する映像があって、そのなかで、1956年のスエズ動乱によって、辞任することになったイギリスの首相はという問いがあって、答えはアンソニー・イーデン。それはいいのだが、そのときの字幕が「保守派のアンソニー・イーデン」とある。
問いも答えも英語の文字で示されるので、まちがえようがないのだが、Conservatvieを「保守派」と訳すのは、字幕作成者の失敗でしょう。通常ならConservativeは「保守的」「保守派」と訳していいのだが、英国の政治家あるいは首相につけるときには「保守党」としなければ間違いである。事実、イーデン首相は保守党だった。これは日本の安倍首相を、「自民党の」党首と表記するのは問題ないのだが、安倍首相を「自由派とか民主派」あるいは「自由民主派」と表記するようなものであって、これは端的にいってまちがいである。阿部首相は、リベラレルでもないし、言論の自由など認めようとしないし、国会での強行採決をする党の党首であって、「自由主義」と「民主主義」をどちらかというと踏みにじっている首相なのだから。
なお今回、字幕作成者は、新人か、無知か、よくわからないが、問題のある字幕もあった。
つづく