2016年11月10日

『空軍量の勝利』2

結局のところ、ディズニーがこの映画(アニメ部分と実写部分からなる)をつくって日本本土への戦術爆撃をアメリカ軍部に提案したということではないだろう。


くりかえすが、アラスカの基地から東京を空襲するという計画は、実現しなかった。たぶん、当時、中国からではなく、南方の基地(グァムとかサイパン)からボーイング社製のB29を空襲に向かわせる計画が着々と進んでいたに違いない。そのため、軍部としての、ディズニーのこの映画を、便利な陽動作戦、つまり空襲が北からおこなわれるとみせかける手段として活用したのではないだろうか。


もちろん日本側のスパイあるいは日本側が、これを陽動作戦と見抜く可能性はある。しかし、見抜かれても、そんなに損失はないだろうし、日本側が、ひっかかるか、あるいは二つの可能性のどちらかを決定できなくても混乱すれば、それだけで有意義だったのだろう。


つまりディズニーのこの映画は、軍に協力しただけのことではないか。一般人を啓蒙し、偽の情報を伝えて陽動作戦にも貢献した。あるいは積極的に協力しなくとも、軍にうまく利用されたというのではないか。


ディズニーに関しては、アリエル・ドルフマンの『ドナルドダックを読む』(共著)があって、私たちは、この本から、ディズニーのアニメ映画がアメリカの中南米への帝国主義的文化侵略に貢献したことを知っている(ちなみに日本でも翻訳があるこの本は、アメリカでは発禁処分になっている)。


したがってディズニーが軍部に協力したことについては、なんの驚きもないが、しかし、ディズニーが、日本本土への戦略爆撃を軍部に進言し、多くの日本人犠牲者を出した大空襲の元凶であるというのは、ディズニーを喜ばせるだけでの、パラノイア的な歴史観としかいいようがない。


posted by ohashi at 22:09| コメント | 更新情報をチェックする