今回はダンテと神曲の主に地獄篇が謎ときの鍵となるのだが、といえそのダンテの使い方は、やや薄い。もう少しダンテとからめてよかったのかもしれないが、原作を読んでいないのでなんともいえないが。ひとつだけボッテチェリの映画いた地獄の絵のなかで、層がちがうとかどうのこうのとラングドン教授が語っていたのだが、あれはどうなったのだろうか。その後、話題にされないまま消えた。実際、その後の、二人の逃避行のなかで、イタリアのレンタカーシステムにびっくりして、そちらのほうに気をとられて、層問題は、忘れてしまったのだが(フェリシティ・ジョーンズが、街に駐車してある車(空車)のフロントガラスにカードみたいなものを押し当てると、ドアが開き中に入りこめるのだが、あれはいったいどんなシステムなのか。ヨーロッパでは普通に行われているらしいのだが、システムがよくわからない)。
ダン・ブラウン原作の世界的ヒット作『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続き、トム・ハンクスが三度、ハーバード大学教授の ロバート・ラングドンに扮したシリーズ第3弾。ハーバード大学の宗教象徴学者ラングドン教授は、数日分の記憶を失った状態で、フィレンツェの病院で目を覚ます。謎の襲撃者に狙われたラングドンは、美しい女医シエナ・ブルックスに助けられて病院を脱出。何者かから追われる身となったラングドンとシエナは、生物学者ゾブリストが人類増加問題の解決策として恐ろしい伝染病を世界に広めようとしていることを知る。そしてゾブリストが詩人ダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」になぞらえて計画を実行していることに気づき、阻止するべく奔走するが……。ロン・ハワード監督と主演のハンクスが続投するほか、ラングドンと共に謎を追う女医シエナ役を「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズが演じる。映画.COM
原作を読んでいないのだが、原作と映画は、設定などかなりかえているらしく、上記の引用からわかるように「恐ろしい伝染病」とだけ紹介しているし、映画をみているかぎり、「恐ろしい伝染病」なのだが、原作では、この伝染病には名前があって「インフェルノ」という。このことは映画だけをみているとわからない。さらに映画では、この伝染病の蔓延は未然に防がれる(まあ、そうなるだろうと安心してみていられる)が、原作では、なんと、伝染病が全世界にばらまかれてしまう(ちなみに映画ではラングドンはケンブリッジ大学教授となっている)。
これに伴いシエナ/フェリシティ・ジョーンズの役割も変化している。原作では、彼女は、最後には、伝染病の治療薬開発に協力することになるというと、映画だけをみている人にとっては、驚きとしかいいようのない展開となる。
とはいえ最近ではスター・ウォーズ・シリーズの『ローグ・ワン』にも主役で出ているフェリシティ・ジョーンズ、昔は、嫌いな女優で、シェイクスピアの『テンペスト』の映画化(ジュリー・テイモア監督)でもミランダを演じている彼女をみて、おまえはミランダじゃないと、心の中でうそぶいていた私も、『博士と彼女の数式』でホーキンズ博士の妻を演じた彼女をみて、ちょっと見直した。歳をとって魅力が増したように思えたのだが、今回の彼女は、ラングドン教授とともに行動する女性(ボンド・ガールならぬラングドン・ガール)となって、しかもあくどさも残していて、いまや、そこも魅力となっている。
富豪の生物学者ゾブリストの存在が、たとえばそれは『キングスマン』のサミュエル・L・ジャクソンと同じなのだが、『キングズマン』は、ある種、パロディとキッチュ満載の映画だからいいとしても、『インフェルノ』では、安っぽく見えてしまう。そのゾブリストだが、演じているベン・フォスターについては、見覚えがあるのだが、あるサイト(オフィシャル・サイトではない)で次のように紹介
ベンフォスターは『X-MEN:ファイナル ディシジョン』、『パニッシャー』、『ローン・サバイバー』など話題作に出演してはいますが、まだ大スターと言えるほどではありません。しかし2016年には彼の名前を聞く機会が増え、もう一つ上のステージに上がるかもしれません。
あるいはNTライブで、『欲望という名の電車』のコワルスキー役などが紹介されているが、いずれも観たことがない。しかし彼が主役の映画を紹介しないとは、こうした映画関係者やファンは、いったいどうしたのかとあきれる。スティーヴン・フリアーズ監督の『疑惑のヒーロー』(原題The Program)は、日本でも公開されたし、主役だった。それで覚えている。この映画は、彼の出演作のなかでは(そもそも主役なのだが)、おそらく一番優れていて面白い映画だと思う。
あとイスタンブールの地下宮殿。007シリーズの『ロシアより愛をこめて』でもロケ地として使われたとのことだが、まったく覚えていなくて、今回、はじめてみることになったのだが、しかし、あんなところでコンサートをするとは考えられない。楽器は水が大敵ではないのだろうか。湿気で高価な楽器がいたむのではないかと心配になった。あと恐ろしい伝染病の菌を、あんなポリ袋に入れて水に沈めるというのは、いい加減すぎるのではと思ったが、まあ、感染させるのであれば、あれでもいいのかもしれないのだが。
テーマである、人口問題と、人類が、地球に生まれた癌であるということも、よく言われすぎて新鮮味がないのだが、しかし、この映画では、圧倒的な数の観光客がイタリアやイスタンブールにいて、人口過密になっている。少し減らしたらどうかと私が思ってしまうのは、私自身、ゾブリストに洗脳されてしまったのか。
もちろん、人類すべてが癌であるとはいえないだろう。トランプ大統領とその一派は、アメリカのみならず、全世界の健康を脅かす癌であることはまちがない。これは癌の第一候補であって、彼らは、メキシコ系の移民がアメリカを脅かす癌だと思っているかもしれないが、トランプ一派こそ、アメリカを弱体化させる癌であると声高に主張したほうがいいだろう。
そしてもうひとつの癌は、老人である。私が老人でもあるので、これは自嘲・自虐的な考えだが、高齢者ドライバーが起こす事故がこのところ目につきすぎる。車は走る凶器だと昔言われたのだが、いまでも、そのことにかわりはない。老人にその凶器を使わせるなと、いいたい。メディアでは、車がなければ生活できない地域があるので高齢者ドライバーもやむを得ないという見解も出されているようだが、そんなくだらない言い訳で、高齢者ドライバーに殺された人間とその親族や知人たちが納得すると思うのか。車がなければ生活できないというのなら、高齢者は死ぬまで車を運転するつもりなのか。ばかばかしくてものもいえない。高齢者ドライバーこそ、癌だ。そして実際、そう語っている私自身が、いや誰もが、高齢者ドライバーの犠牲になって死ぬかもしれないのだ。事態の重要性を痛感すべきである。No countries for old men.
本日は、ネットで予約し発券機で番号をうちこんだら、機会に、違うといわれた。予約番号を知らせるメールのプリントアウトももっていたので、番号を確かめ、正しく入力したつもりなのに機械からは番号が違うと拒否された。後ろで並んでいる人にも迷惑がかかるので、いったん退いて、映画館のカウンターで、プリントアウトをみせて、発券してもらおうかと思って、プリントアウトをよくみたら映画館が違っていた。そう、自分で、いつもとはちがった映画を予約したことを、すっかり忘れていた。高齢者は、これである。ぼける。そのぼけ老人の私よりももっと高齢の人間が車を運転している。ぜったいにやめさせるべきだ。No countries for old men.