昨日、テレビで、ダチョウ倶楽部の上島龍平が旅先でペイチャンネルをみようとしたら見ることができない。そこでホテルのフロントにクレームをつけに行ったら、修学旅行の団体が入っているのでペイチャンネルを見えないようにしているといわれ、がっかりしつつ文句を言っていたら、ほかの客がフロントにやってきたので、あわてて身を隠したところ、よく見るとその客はリーダーの肥後で、同じくペイチャンネルが見られないとクレームをつけていたという、なさけない笑い話をしていた(寺門はクレームに出てこなかったとも)。
ただ楽しみにしていたペイチャンネルが見られない。修学旅行客がいたから、というのは、笑い話の定番になっていて、ネタかもしれない。つまりほんとうかどうかわからない。修学旅行生が、ペイチャンネルを見ようと、こっそり自販機でテレビカードを購入してみようとしたら、先生がホテル側にペイチャンネルを見られないようにお願いしていたため、カードがふいになったという話はネットなんかに載っている。定番の笑い話なのだろう。
私は、わざわざ金を払ってペイチャンネルはみない。みないけれども恥ずかしい思いをしたことがある。講演もあって同じホテルに2泊したことがあった。ビジネスホテルだが、ネットで予約して、クレジットカードですでに支払っていた。当日、チェックインすると、フロントでテレビカードを2枚渡された。え、これは、と私が戸惑っていると、お客様が予約されて購入されたものですという。ホテルからのサービスではないということだった。しかし、ペイチャンネルをみることができる2日分のテレビカード。
実は講演を控えて、原稿が完成していない。初日は、研究会での発表。こちらは準備ができているのだが、翌々日の講演会は、原稿がまだできてない。そこで宿泊2日めは、朝からホテルの部屋にひきこもって原稿を書くことにした。書くといっても、ノートパソコンに打ち込んで、最後にプリントアウトするということなのだが、とにかく部屋の掃除も断って(使ったタオルを部屋の外に出しておくと、新しいタオルを代わりにおいてくれるサービスになっていた)、朝からパソコンに向かった。書けない。そもそも、すんなり書けるのだったら、最初から、ホテルの部屋で書くほど切羽つまらない。
結局、未消化のまま原稿を完成して、講演をしたが、評判は悪いというよりも、評判は良くも悪くもまったくなくて、無視するしかない、ひどい出来ということだったのだが。
内容はシェイクスピアのいわゆる「四代悲劇」は、同じ主題の変奏になっているということ。『ハムレット』と『オセロー』が、同じ主題の変奏であることはすぐにわかる。それは不釣り合いな結婚に対する息子の反対である。ハムレットは、母ガートルードと叔父クローディアスの結婚に反対している。イアーゴーは、父親ほど年齢の違うオセローとデズデモーナの異人種婚に反対している。ハムレットを演じた役者がイアーゴーを演じ、クローディアス役が、オセロー役、ガートルード役がデズデモーナ役というようにシフトする。雰囲気、主題など、まったく関係のなさそうな『ハムレット』と『オセロー』は、深層構造が似ている。『ハムレット』のアダプテーションが『オセロー』であるかのようにも思える。
ここまではいいのだが、さらに『リア王』も『マクベス』も『ハムレット』の変奏であると証明しようとなると、証明できれば面白いが、直感的に納得できる議論とはならないし、詭弁を弄しての七転八倒の議論となるため、講演の内容は当惑しかもたらさなかったようだ。
しかし、『ハムレット』と、『リア王』あるいは『マクベス』は、まったく似ていないかというとそうでもない。共通のモチーフはあるし、共通のテーマもある。同じ劇団が、それぞれの俳優の持ち味を生かして、4つの変奏曲を作ったというのは、突飛な議論ではないし、そこから見えてくるものがある。
また、もうひとつの観点として、男女の恋愛ドラマが、『ロミオとジュリエット』のように若い恋人たちが障害を乗り越えて結ばれる、あるいは結ばれないというパタンは、英文学のなかでは一般化せず、どちらかというとプレイボーイの男に若い女性が惹かれていくというパタンが演劇でも小説でも一般化してゆく(ジェイン・オースティンの小説を見よ)が、そのパタンを考慮すると『ハムレット』にはじまるメジャーな悲劇における男女関係において見えてくるものがあるという議論。とはいえ実証的でも、思想的でも、歴史社会的な議論でもないので、もし私に、シェイクスピアを専門とする大学院生がいて(いまは、いないのだが)、私が話そうとしている内容を知ったらなら、即座に、止めにはいるような内容であることは認めざるを得ない。その彼ないし彼女は、「先生、そんな話は、やめるべきです。みんなしらけるだけで、だれも喜ばない議論ですよ。ポストコロニアルでも、クィアでもなんでもいいので、そういう話をみんな先生から求めているのであって、そんな思い付きだけの話は止めたほうがよいですよ」と諭してくれたかもしれない。
残念ながら、そんな学生はいなかったし、また諭されれば、諭されるほど、いうことを聞かない私なので、結局は、その講演をするしかなくて、おおくの人をしらけさせただけなのだが。
ただ、問題は、ホテルの一室にこもって原稿を書くのはいいとして、ペイチャンネルをみることができるテレビカードを前もって予約している、しかも二日分2枚ももって、一日中部屋にこもらざるを得なかったことだ。ペイチャンネル見放題? それって私は変態じゃないか。よほどの欲求不満で、旅先で、一日、ホテルにこもってペイチャンネルをみまくっている。そうして***しているというこになる。なんたる欲求不満の変態だと、ホテル側もあきれているだろう。とにかく、そう考えられてもおかしくない。恥ずかしすぎる。
恥ずかしいことになった。で、ペイチャンネルは絶対に見ないことにした。そもそも私はホテルでペイチャンネルをみたことはない。ホテルの部屋では地上波であれ衛星放送であれ無料でみることができる。それでなんの不便もなかった。翌日、チェックアウトする前に、一度も使わなかったテレビカードを二枚、部屋にこれみよがしに置いていったが、しかし、何の意味もなかっただろう。三日間、とりわけ部屋にこもった二日目からは、すでに、変態客の烙印を押されていたのだろうから。
