2025年01月24日

満票の思い出

米野球殿堂は21日(日本時間22日)、今年の殿堂入りメンバーを、メジャー通算3089安打を放ったイチロー(51)=本名・鈴木一朗=を選出した。全米野球記者協会(BBWAA)の有資格投票者394人のうち、1人の記者だけが票を投じず、得票率は99・7%。マリアーノ・リベラさん(元ヤンキース)以来、史上2人目の満票選出はならなかった。

イチローに票を入れなかった記者は誰なのか、なぜ入れなかったのか。その理由について、開示してほしい、ひょっとしたら何かのミスで投票しそこねたのではと、いろいろな意見が飛び交っているようだが、アメリカ野球史上、これまで満票で選ばれて殿堂入りした選手は一人しかいなかったみたいで、どんなに優れた選手でも満票は奇跡に近いということだろう。その奇跡が今回起こらなかったのは残念だが、しかたのないことでもあるのだろう。

私は満票で選ばれて何かになったということはないが、教授会では私が推薦演説をした候補は満票で選出されていた。

これは奇跡でもなんでもなくて、人事委員会で対立候補を立てることなく一人に絞った候補者が、教授会での審議と選挙によって否決されることはないし、またそうした候補はたいてい満票で選出されていた。ここでいう候補者とは、新任の教員か、昇格する教員である。

私が退職してから何年もたつので、いまも同じ形式で人事選考をすすめているのかわからないので、あくまでも私が在職中のことである。またそれだから話して問題はないだろう。時効が成立していると思う。

私が所属している研究室で人事案件を起こす場合、研究室主任が教授会で推薦演説をする。主任は研究室メンバーのうち最年長者がなるので(事情によっては、この原則が守られないこともあるのだが)、私は在職中の最後の数年間、研究室主任として、教授会で推薦演説を行なった。

私が推薦演説を行なった人物は、満票で選出された。とはいえこれは珍しいことはない。ほとんどの候補者が満票で選出されるからだ。ただし、時々、数票の反対票か白票が入ることがある。もちろん、それくらいの数の反対票は候補者選出にまったく影響しない。全体で何票あれば選出決定かは規則に定められているし、数票の反対票があっても、全く問題ではないからだ。

ただそれでも自分で推薦演説をした候補者が満票で選出されるのは気持ちがいいものである。そして私の主任の任期中、最後の推薦演説をする時がやってきた。これまで満票での選出だったから、今回も満票であって欲しかったが、さすがに最後まで満票というのはないかもしれないと思った。

候補者に問題があるのではない。私自身よりも業績がはるかに多い、優れた候補者だったから、選出されることは100%確実である。ただ満票で決まるかどうか。反対票か白票が1票か2票入るのではないか。それもスイッチを押し間違えて反対票に入れてしまうようなミスをする者によって。もちろんひとりかふたりミスをしても選出されることは間違いない。だから選出は100%確実であるのだが、神様がいたずらをして満票にしてくれないのではないか。いままでが運がよすぎたのでは。そんな思いが渦巻いていた……。

そしてその結果、私が在職中、最後の推薦演説を行なった候補者は満票で選出された。もちろん候補者の優秀さが正しく評価された結果だが、最後まで満票であったことで私は安堵し自己満足にひたっていた。

posted by ohashi at 00:03| コメント | 更新情報をチェックする