TokyoMXテレビ『カフェブレイク』(午前8時30分から9時)で、ゲストの暁千星が月組の『カンパニー』(ミューカル)と『Baddy』(レヴュー)について紹介しているのだけれども(本日で公演は終わり)、暁千星、あまり着目していなかったが、テレビでみると、可愛い少年キャラだとわかり、チケットが手に入れば次回の月組公演、日本青年館まで足を運ぼうかとも思った。
それはともかく今回たまたま見ることができたの月組東京公演、『カンパニー』は、現代に日本のバレエ団に出向した製薬会社のサラリーマンの話で、宝塚の舞台に期待されるエキゾチズムもロマンティシズムもなにもない異色の舞台であった。
昨年出版された伊吹有喜の小説『カンパニー』は、サラリーマン小説とバレエやバレエ団の話を組み合わせている異色小説のようだが、そこに新鮮な驚きもあって、読んだ人によれば、評判はよい(読んでみようかと思ったが、単行本と電子書籍の値段がそんなにかわらない。新潮社、もうすこし電子書籍安くしね)。まあ伊吹有喜の小説は『四十九日のレシピ』で映画化されてもいる。
小説としてはプラス方向というかポジティヴに異色だとしたら、宝塚として異色さがネガティブにはたらくのではないか。コンビニでバイトする話やコンビニが舞台となったりするミュージカルは異色すぎる。生活感がありすぎる。バレエ団ではなくバレエのパフォーマンスがなければ、宝塚ミュージカルとして異色すぎて、つまり華がなくなってしまう。時折さしはさまれるバレーのシーンが、救いと言えば救いか。衣装にしても背広など現代日本における日常性が濃厚で、むしろあえて日常性の突出を狙ったのかもしれないが、違和感は残る。もちろん好き嫌いの問題なのかもしれないが。
ただ日常性を狙いすぎて本来の面白さを消してしまっているのが、「フラッシュモブ」シーンである。フラッシュモブ(flash mob)とは「インターネット上や口コミで呼びかけた不特定多数の人々が申し合わせ、雑踏の中の歩行者を装って通りすがり、公共の場に集まり前触れなく突如としてパフォーマンス(ダンスや演奏など)を行って、周囲の関心を引いたのち解散する行為」(Wikipediaの定義)なのだが、フラッシュ・モブを使って、バレエ公演の宣伝をするというアイデアは面白い。また宝塚の舞台にはたくさんの人物が登場するので、フラッシュ・モブのシーンは、圧巻の郡舞となって終わるかと思いきや、ただの盆踊りで、新公演の宣伝をすることで終わってしまう。
原作ではフラッシュ・モブの準備過程など事細かに描かれていて、興味深いのだが、ヴィジュアルで舞台でフラッシュモブを実現できるはずなのに、ほんとうに盆踊りでしかない、あの場面は、フラッシュモブの非日常性よりも、盆踊りの日常性を選択したからなのか。
ブルーレイ/DVDも発売されているので、興味のある方は確かめてみては。
ブルーレイ/DVDを購入した理由は、レヴューの『Baddy』もまた異色でというか、良い意味で異色すぎるものであると思ったので。ただ今回、たまたま見たの公演では、たとえば途中で舞台で全員アフロヘアになって、客席も異様に盛り上がりを見せていたのだが、何も知らない私は、そういう演出なのかとみていたが、これは、その日の公演が月組祭り公演で、普段のヴァージョンではない特別ヴァージョンで、二度見、三度見の観客むけのサービスなのだ教えてもらった。舞台で全員がアフロヘアになるという、意味のない展開は、そういうことだったのかと納得したが、同時に、レヴュー自体が、ナンセンスにはじけすぎていて、突然アフロヘアで踊り始めても、とくに違和感を感じなかったのも事実。
とはいえ通常ヴァージョンを知らない者にとっては、ブルーレイ/DVDでみるほかはない(まあ本日千秋楽で映画館で生中継されるのだが、もともとその時間はないし、時間があってもチケットは完売だろう)。ただそれ以外にもレヴューの方はいしょくすぎてぶっとんでいるので、見てみる価値はあり。
ここでレヴューについて詳しく説明しないのは、ネタバレをしないということではなく、レヴューの内容を説明すると、私の頭がぶっとんでいるのかと誤解されかねないので。え、嘘だろうと思ったら、ぜひ、ブルーレイ/DVDで確認していただきたい。