2017年05月23日

映画館と眠り

私も映画館でよく眠ってしまうので、人のことは言えないのだが、前回触れた『パーソナル・ショッパー』を観た時、私の隣に座ったメタボ男は寝ていた。映画は、予想外の展開はしたが、つまらない映画ではなかった。『カフェ・ソサエティ』のなかの絵にかいたような美女のクリスティン・スチュワートよりも、こちらの主役のクリスティン・スチュワートのほうが、あえてオーラを消しているようなところもあって女性としても人間としても魅力的なかたちで提示されていたのだから。


そのメタボ男、席に着くなり、いろいろ食べまくって、映画が始まる頃には、ぷしゅと音がした。缶ビールか、炭酸入り清涼飲料水をあける音がした。ビールの場合、アルコールで、清涼飲料水の場合、血糖値があがり、眠くなるぞと、他人ごとながら心配したら、いきなり寝始めた。


まあ私もよく映画館で寝てしまうので、人のことをとやかくはいえない。またこのメタボ男、とくに私もふくめ周囲に迷惑をかけているわけではないので、べつにかまわないのだが、目が覚めて映画が進んでしまっているときに、どんな反応をするのか。しばらくみて筋を追ってみて追えないとわかったらどうするのか。あきらめて眠ってしまうのか。そのへんは、すぐ隣なので気配でわかるので、ちょっと興味を思って、メタボ男の寝覚めをまっていた。


そうしたらいびきが聞こえてきた、本格的に眠るつもりなのかと、ややあきれた。私もまあ人のことはいえなくて、以前『CIジョー バック2リヴェンジ』では、最初から眠ってしまい、激しい戦闘シーンが続いても眠っていて、気づくと、前作で主役だったチャンニング・テイタムが、その姿を映画のなかで観る前に、戦死していた。まあそれでも目が覚めてからは筋が追えたし、あとで振り返れば、寝ていて損はない映画だった。


あるいはテレンス・マリックの映画『ツリー・オブ・ライフ』を観た時。映画がはじまってすぐに眠ってしまって、目が覚めたら大きなスクリーンに恐竜の親子が出ていて、さすがにこのとき映画館を間違えたと、あわてて席をたとうとした。ただ、寝ぼけ眼で少し見ていたら、この映画でいいとわかって席をたつのをやめたのだが。


ただ、いずれにせよ眠っていたの15分から30分以内で、仮眠状態だから必ず目が覚める。目が覚めてから反省し後悔しつつ、筋が追えて内容が把握できたら、それでよしとする。内容がわからないこともあってけっこうスリリングな体験でもあるのだが、映画上映中に眠ってしまっても、上映時間内に目が覚める。ところが隣のメタボ男、結局、映画終わるまで、エンドクレジットが終わるまで、いや終わってからも眠り続けていた。いびきをかいているので死んでいるのではない。しかし、まあ、いったい何をしに映画館に来ているのだ。仮眠するか熟睡するのなら、もっとよい環境のところがあるのだろう。いや、映画館に眠りにきたわけではないので、お金も時間も無駄ではないか。もったいないのではないか。はずかしくないか。自己嫌悪に陥るのではないか、ほんとうにチケット代が、安いか高いかは別にして、ほんとうにもったいないぞ。


とはいえ私も最初から最後まで眠ってしまった映画もあるので、人のことは言えない。その映画は、さすがに筋も内容もなにもわからなかったので、後日、もう一度見た。内容はわかったが、それでも途中、意識不明になっている時間があったのだが。しかし菓子やスナックをむしゃむしゃ食ってビール(だろう)まで飲んだら眠くなることはわからないのか。わかっていてやめるくらいならメタボにならないだろうから、言ってもむだか。


ただ、もったいないことについては、わたしのほうがうえだぞ。今週、映画館でネットで購入したチケットを発券しようとしたら発券できない。機械の不調かと受付へ行こうとしてメモをみて驚いた。私が予約したのは昨日分のチケットで、本日のチケットではなかった。結局、受付で当日券を購入して映画をみたが。もったいないぞ。恥をしれ、この人間のクズと自分に言い聞かせた。


また次の日に発券して席につこうとしたら誰かが座っている。その席は違いませんかと尋ねたら、その女性がもっているチケットにはまちがいはなかった。自分のチケットをみたら、明日のチケットだった。あわてて映画館を出た。翌日出直すしかない。しかし翌日になると大学で急用ができ、おまけにその発券したチケット、ごみといっしょに捨ててしまった。なんてもったいないことを。これで2回分のチケット無駄にした。映画館に眠りにきたメタボ男以下の私だ。頭の中がメタボ状態で、これでは廃人の一歩手前だ。人間のクズと自分をののしった。

posted by ohashi at 21:12| エッセイ | 更新情報をチェックする