ディズニーが「東京大空襲」をけしかけていた! 戦後は原発の旗振り役に…日本に災厄もたらすディズニーの黒い顔
ディズニーの黒い顔については、べつに驚きはしないが、そこで触れられているディズニーの古いアニメ『空軍力による勝利』、日本では、ソフト化されておらず、幻の映画ということだが、私は、昔、イギリスのテレビで見たことがある。その時の印象は、この記事で語られていることと少し違うので、ここでコメントを。
記事にはつぎのような言葉がならぶ。そのまま引用する。
……日本でも大人気のディズニーだが、実はかつて、日本人の大量殺戮を煽る映画をつくっていたのをご存知だろうか。
その作品とは第二次大戦中の1943年にアメリカで公開された『空軍力による勝利(原題:Victory Through Air Power)』。日本ではソフト化されておらず、知る人ぞ知るこの作品を、映画評論家の町山智浩氏が新著『最も危険なアメリカ映画』(集英社インターナショナル)で紹介し話題となっている。
中略。
そして、第二幕に入ると、この映画の原作本『空軍力による勝利』の著者アレクサンダー・P・デ・セヴァルスキー氏が登場。彼は、日本は南太平洋の島々に基地をもっているが、いくらそれらを叩いてもそのたびに自国の兵隊に死傷者が出るばかりでいっこうに本体は叩けないと現在の戦況の問題点を説明する。そして、航空機で日本の本土を攻撃するべきだと、戦略爆撃の必要性を強く主張するのだ。
そして映画のラストは、アニメーションで日本の都市に大量の爆弾が投下され街が燃え盛る様子が生々しく描かれた後、星条旗がたなびくカットで幕を下ろす。
米空軍による日本本土への戦略爆撃、空襲が本格化するのは、この映画公開の翌年、1944年からである。この日本本土空襲は200以上の都市で行われ、軍事施設だけでなく、多くの一般市民が被災。東京大空襲では11万人、合計では30万人以上が死亡したといわれている。
ようするに、ディズニーはこうした一般市民も含む大量殺戮行為を正当化し、推進するためのプロパガンダ映画をつくっていたのだ。
もちろん、戦時中は、映画でも音楽でも小説でも漫画でも演劇でも、大衆から人気を集めているクリエイターに国が戦意高揚のための作品を無理やりつくらせることは珍しいことではなく、戦時中は日本でもしきりにつくられていた。
だが、映画『空軍力による勝利』はそういった過程を経て製作された作品ではない。ウォルト・ディズニー自身が、長距離爆撃機による敵国本土への戦略爆撃の必要性を伝えたいと率先して製作した映画なのだ。この映画にかける予算やスタッフの人員を見ると、その力の入れ具合がよく分かる。町山氏は『最も危険なアメリカ映画』のなかでこのように書いている。
〈ディズニーは、まず軍部に資金援助を打診した。しかし、「陸海軍は時代遅れだ」とする本の映画化に軍が協力するはずがない。そこで、ディズニーは自分の懐から製作費七十八万八千ドルを出した。『ダンボ』(41年)が九十五万ドルだから、これは立派な予算だ。スタッフには『白雪姫』(37年)や『ファンタジア』(40年)、『ダンボ』、『バンビ』(42年)のアニメーターを投入した〉
ディズニーはこのフィルムをチャーチル首相やルーズベルト大統領にも見せるように画策し、特にチャーチル首相はこの映画に感銘を受けていたと伝えられている。
この映画が封切られた時点で連合国側はドイツや日本に対して小規模な爆撃を行い始めてはいたが、それが本格化し、30万人以上という大量の死者を出した無差別爆撃にエスカレートしていった背景に、ディズニーの存在があったことはまぎれもない事実だろう。
以上。
だが、その映画をみたことがある人なら、もっと別の感想を抱くはずだ。町山氏の知識と見解には、つねに敬意を表している私だが、もし、この紹介が正しければ、町山氏は、歴史と、空軍力について、なにも知らないといわざるをえない。
私よりも上の世代の人たちは、「ディズニー・ランド」という往年の1時間のテレビ番組を知っているだろう。日本ではプロレス番組とこのディズニーアワーとを隔週ごとに放送していて、プロレス・ファンではなかった私は、プロレス番組をやめて毎週「ディスニーアワー」を放送してほしいと切に願ったりしたものだ。
その「ディズニー・ランド」は、本体のディズニーランドを模して、おとぎの国、動物の国、未来の国などとジャンル分けされ、一番組に一ジャンルを放送したが、私が好きだったのは、未来の国だった。アニメや実写、インタヴューなどを組み合わせながら、たとえば火星探検というタイトルの回は、火星の歴史とか、宇宙旅行の歴史とか、テクノロジーを、インタヴューや、専門の解説、アニメを交えてわかりやすく解説し、最後には、未来の火星探検旅行はこうなるということを、リアルなアニメ(いまふうでいうなら、リアルなCG画像といえばわかってもらえるだろうか)によって説明していた。この最後の未来予想アニメが圧巻で、いつも深い感銘をうけていたことはいうまでもない。
イギリスで『空軍力の勝利』という戦争中につくられたディズニーの映画をみて、この『ディズニー・ランド』の〈未来の国〉を思い出した。作り方は、まったく同じだった。火星探検旅行編では、ラストでは、今まで見たこともない、しかも、けっこうリアルな宇宙船(スタートレックスのエンタープライズ号の円盤部分が似ている宇宙船だが、そんな姿の宇宙船は、少年漫画誌に小松崎茂だって書いていなかったのだ)が、一列になって火星の周回軌道に入っていく姿に圧倒されたのだが、この『空軍力の勝利』では、先ほどのLITERAの記事を引用すれば、「アニメーションで日本の都市に大量の爆弾が投下され街が燃え盛る様子が生々しく描かれた後、星条旗がたなびくカットで幕を下ろす」というラストとなる。
戦争中は、こうした戦争協力映画も作っていたのか、という感慨しかわいてこなかったのだが、気になったのは、またそこが恐ろしいと思ったことは、『空軍力の勝利』の未来予測が、はずれていることである。
まず、コメントしている「アレクサンダー・P・デ・セヴァルスキー」だが、Wikipediaによると、「アレクサーンドル・セーヴェルスキイ(英語読み:アレキサンダー・セバスキー)」とある(英語読みだったらアレグザンダーだろうが、そこは無視する)。つまりふつうはセバスキーという。そしてセバスキーは、のちにリパブリックと改名するアメリカの航空機メーカーであり、このセバスキーは、その創立者。したがってセバスキーと呼んだほうがわかりやすい。
『空軍力の勝利』がおかしいのは、このセバスキー/リパブリックがつくる新型の高性能戦略爆撃機というのが登場し、この爆撃機が東京の空襲を行うのである。笑える。受ける。
第二次世界大戦中にアメリカがつくった戦略爆撃機は、B17(ボーイング)、B24(コンソリデーディッド)、B29(ボーイング)、B32(コンソリデーティッド)であって、セバスキー/リパブリックの大型戦略爆撃機など影も形もない。そもそも試作されたのだろうか。リパブリックの、P47戦闘機は傑作機だが、大型爆撃機の経験のないリパブリックに試作の発注があったのだろうか。いずれにせよ、リパブリックの戦略爆撃機は存在しなかった。その存在しなかった爆撃機が、『空軍力の勝利』では東京を空襲するのである。しかもアラスカの基地から飛び立って!
本土空襲の必要性についてはLITERAの紹介記事にあるように「彼は、日本は南太平洋の島々に基地をもっているが、いくらそれらを叩いてもそのたびに自国の兵隊に死傷者が出るばかりでいっこうに本体は叩けないと現在の戦況の問題点を説明する。そして、航空機で日本の本土を攻撃するべきだと、戦略爆撃の必要性を強く主張するのだ。」ということだが、このとき説明のために使われるアニメというのが、ドイツ帝国と大日本帝国の支配権を丸い円であらわし、円の周辺をつっついても、ぱんぱんにふくれがったまん丸の風船は、かたくて穴があけられない、よしんば、穴をあけることができても、その穴はすぐに埋められてしまうというアニメなのだ。なんの比喩だといいたくなった。ドイツ帝国も、大日本帝国も鉄壁の守りということをいいたいらしいのだが、日本の場合、戦線が拡大すれば、それだけ補給補充が困難をきわめることになり不利になるのではないかと思うのだが、わけのわからない円ですべてを説明してしまうのだ。笑える。
そしてどこから本土攻撃にいくかという段になって、アラスカの基地から南下するしかないと語られるのだ。しかし、いうまでもなく、本土爆撃の戦略爆撃機B29は、南から北上してきた。本土爆撃をおこなう爆撃機は、南から飛来したのに、この映画では、アラスカか南下してくる。実際とは全然ちがう。どうしたのだ、この違いはと不思議に思い、さらに空恐ろしくなった。
つまりこれって陽動作戦ではないか。日本のスパイが、この映画をみれば、アメリカは、アラスカからの戦略爆撃を考えていると思い込むのではないか。北からくるとみせかけて、南からくる。まさに裏をかくことになって、日本は混乱する。そのような陽動作戦にディズニーは加担したのかというが、イギリスではじめてこの映画をみた私の感想だった。
つづく